月と六ペンス /ウィリアム・サマセット モーム【本】を読んだ




月と六ペンス / サマセット・モーム



古典文学ですねえ。

1919年に発刊されたものなんすけど、

ぜんぜん古びた感じはしなかったすね。

初めて読んだんですけど、

普通におもしろかったです。

わかりやすい文章でありながら、

けっこう含蓄のある文章でもあり、

次がどうなるか次が気になって

ページをめくらせるストーリーテリングのうまさもあり、

これは今売られている小説の中に

並べてもまったくひけをとらないどころか、

このレベルのものを探すのは苦労するんじゃないか

みたいなそういうよく出来た小説だったなあ。

光文社の古典新訳文庫のバージョンで読んだのが

よかったのかもしれないっすね。

海外ものの古典文学ってさあ、

訳が古臭すぎる、

ページに小さい文字を行間とかスペースを

考えずにびっしり詰め込んだページ構成、

だったりして、

読まれることを拒んでるんじゃないかっていうね、

翻訳も本としての作りも悪いものが多くて、

なかなか手が伸びないんすけどね。

こういう風に翻訳をしなおして、

文字の大きさや行間のスペースも

ちゃんと読みやすいように調整されなおして

出版されるといいですよね。

内容は、芸術心に目覚めた一人の男の話なんすけど、

語り手は作家の男。

作家の男が知り合いの夫人から頼まれるわけです。

夫が突然出て行ってしまった。

パリにいるらしいのだが、

女と一緒らしいと。

夫は何を考えているのか、何をしているのか、

会って話してきて欲しいと。

それがきっかけで、

作家はこの死後に傑作を残した高名な画家として

知られるようになる男と深くかかわっていくことになるわけです。

株式仲買人として収入もあり、

妻と子供もいて、はたから見れば

なんの不自由もない生活をおくっていた男が、

突然、なにもかも捨てて

絵を描くことだけに専念する人生を選択する。

その絵は、男が生きていたうちはまったく評価されず、

男が死んだあとに評価が高まり、

男は傑作を描いた巨匠としての名声を手に入れる。

生きてる間は、無一文の極貧生活、

死後、評価されるというのは、

何人かの実在の画家を連想させますね。

晩年をタヒチで過ごすというのは、

ゴーギャンっぽいすかね。

ゴーガンがモデルかな。

画家の破天荒なというかむちゃくちゃなというか、

波乱の人生を作家の視点から

描写するんだけど、

画家本人が、どうしてその道を選択したのか、

なぜそうしたのかという部分は

あまり描かれない。

本文中でもその点が不足していると

語り手の作家本人が自分で指摘しているのだけど

そこは誰にもわからないってことなんすかね。

人生も半ば過ぎ、

安定した生活を捨てて

絵を描いて納得する作品を残すことに

残りの人生すべてをかける。

その衝動に従うことが、

今までの人生の安定よりも

はるかに重要で、

二つを比べることすらも

ばかばかしいほどの明らかな差があるというね。

月と六ペンスというのは、

理想や至高の情熱と

平凡で退屈な日常を比喩にした言葉らしいっすけど、

月と六ペンスでは、

比較にならない、

月が圧倒的にすばらしいものであるが、

手が届かないものであるがゆえに、

六ペンスを捨てて

月をつかもうとするものは

すべてを失うことになる。

それでも瞬間、ほんの一瞬でも

やりとげたという充実感を得られるかもしれない

というほとんど奇跡のような

瞬間をむかえるために

人は何かをするんじゃないかみたいな。

そのためには、妻も子供も捨てるし、

つかのまの肉欲で人妻と寝るし、

それでその女が自殺しようが

気にもならないしで、

常識や世間のルールよりも、

やらなくてはならないことを

優先することにまったくの迷いもない。

人生の目的を見つけてしまった人間というのは

幸せなのか不幸せなのか。

脇役もなかなかいいんですよ。

ストリックランドの絵を傑作だと言い、

ストリックランドは本物の天才絵描きだと、

才能を見抜いた画家仲間の男。

こいつの嫁が寝取られるんですけどね。

性格は良くて、本物の芸術を見抜く能力もあるのだが、

自分では芸術を生み出せない。

本物を見抜く能力がありながら、

彼の描く絵は、売れるんだけど、

絵葉書のように面白みのない

芸術としての価値のまったくないものなんです。

見栄えが小奇麗だから重宝はされるけども、

人に何か衝撃を与えるようなものでは

まったくないのです。

皮肉ですね。

天才が天才であると理解できるだけの

目はあるのだけど、

自分は天才ではない。

身を滅ぼされるような仕打ちをうけても、

まだ、あいつは天才だからと認める心を持ち続ける

お人よしというかなんというか。

こういうキャラクターが一番おもしろいっすねえ。

まあ、あとは、ストリックランドに捨てられた嫁ね。

嫁のなんか俗物っぽいかんじ。

捨てられてすべてが終わりみたいな

か弱さがあるのかと思いきや、

商売始めてそれで成功して、

ストリックランドが死んで評価が高まると

天才画家の妻として優雅な振る舞いをする。

この奥さんは、体裁をつくろうことがすべてで、

中身はなにもないかんじがするんすねえ。

世俗のルールでうまくやっていくことに

情熱を傾けているみたいな。

すべてを捨ててやりとげなければならないことを

見つけてしまった天才と、

天才を理解できる凡人、

ただの俗物、

そんなやつらが織り成すドラマです。

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