さびしんぼう

さびしんぼう


さびしんぼう


おーい、さびしんぼう。

人は恋するときだれもがさびしんぼうになる……。

たんたん狸の金玉は~、風もないのにブーラブラア~。

いやー、狂ってるなあ。

大林宣彦監督のマッドな魅力が全開ですよ。

尾道を舞台に爆裂する大林ワールド。

これははまる人はどっぷりはまるけど、

はまらない人には、なんじゃこりゃ?ですよ。

チンコの皮剥けたての尾美としのりが恋するんすよ。

なにかといっちゃあ意味もなく、

バク転したり宙返りしたりするJACの悪友たちとふざける毎日だが、

学校の音楽教室でピアノを弾くどこか謎めいた雰囲気の少女、富田靖子に恋するわけです。

カメラの望遠レンズで覗いて、あああの子かわいいなあ、

友達になりたいなあ、

ぼくのさびしんぼうとため息をつく毎日。

尾美としのりの家はお寺さん。

無口な父、小林稔侍と、ガミガミうるさい母、藤田弓子。

お寺の大掃除をして、古い写真が風に舞って散乱した日から、

尾美としのりの前に、謎の少女が現れるようになる。

顔を白塗りしたピエロのつもりの富田靖子です。

尾美としのりが恋しているピアノの彼女と、

このピエロのさびしんぼうを富田靖子が2役演じています。

このピエロの富田靖子は、尾美としのりにしか見えない存在で、

なんかその恋心みたいなのが具現化したものなのかなと思ったら、

他の人にも見えるんすよ。

誰だ、あのへんな娘?ってみんなにも見えてる。

ブラジャー姿の藤田弓子と追いかけっこしたりしてんすよ。

それでおまえのとこのお母さん、頭がおかしくなってたいへんだなあとか、

藤田弓子の頭がおかしくなったとか噂がたって大騒動になったりするのです。

英語教師の秋川リサのスカートはことあるごとに簡単にずり落ち、

ハレンチ学園なみにパンティが丸見えになるし、

タヌキの金玉がぶらぶら歌をオウムに覚えさせるいたずらをするし、

けっこうドタバタのギャグで前半は覆い尽くされている。

後半は一転、しんみりするのです。

白塗りのさびしんぼうの正体。

ピアノの彼女の家の事情。

尾美としのりの恋の行方はどうなるかと、

ショパンの「別れの曲」の調べに乗って非常にせつない話が展開するのです。

前半に常軌を逸したようなギャグテイストをちりばめておいて、

後半、シリアスに攻めるというパターンが大林テイストを形作っていると思うんすけど、

これは監督のこだわりらしいっすね。

バカ騒ぎを目一杯やることによって、シリアスなシーンがさらにシリアスに強く引き立つ。

笑いからシリアスへのふり幅を大きくすることによって、

印象を強く増幅する効果を狙ってのことだと、特典映像で語ってました。

なるほどなと。

これが大林宣彦映画の秘密かと。

どの大林作品でも感じる奇妙な感動というのは、

こういう監督の物語を作る上での外せないロジックがあるからなんすねえ。

これがはまれば、絶大な効果を生むけども、

はずせば奇妙なだけで終ってしまう両刃の剣。

まあ、外すときが多いような気がするけどね。

この「さびしんぼう」はどうすかねえ。

いいシーンはたくさんありました。

小林稔侍と尾美としのりが一緒に風呂に入って語るシーン。

あそこはよかったなあ。

普段は無口でまったく子供の様子に興味なさげな父親が、

恋について語るんだわ。

お母さんにもいろいろ恋の思い出があるだろう。

お父さんは、その想い出も一緒に含めてお母さんの全部が好きなんだつって。

おお、親父、わかってるじゃないかっていうずばっと核心をついてくる発言。

父親はこうでなくては。

あとはなんすかね、

人に恋する気持ちっていうのは、

誰しもがもってるもので、

ガミガミいう母親にも、

人を好きになってせつない思いをしていた時代が確実にあった。

その思いを、母親と息子がピエロの格好した若いときの母親の幻影を介して、

共有するというこの物語の構造。

それがなんかよかったね。

誰かに恋したときのせつない思いを時代を超えてつなげる役割をするのがショパンの「別れの曲」。

いやー、やりますね。

ロマンチックですなあ。

ある意味、狂気のストーリーでありますが、

これほどロンチックなこともないってかんじで、

これぞ大林宣彦テイスト炸裂ってかんじです。

富田靖子が歌うエンディング曲の「さびしんぼう」も狂ってます。

別れの曲に歌詞をつけて歌ってるんすけど、

なんともいえない怪作に仕上がってます。

劇場公開時は、これだったみたいすけど、

DVDバージョンのエンディングは、ピアノの別れの曲が流れるエンディングに差し替えられてます。

富田靖子が歌うバージョンは特典に収録されています。

でも、ここは富田靖子が歌うマッドなエンディングバージョンで見て欲しいですね。

すごい歌だ、これは。

出演は他に岸部一徳、樹木希林、小林聡美など。

尾道三部作のひとつ。

尾道の狭い路地の階段を散策したくなりました。

・サントラ/さびしんぼう
さびしんぼう―シナリオ写真集
・原作:山中恒/なんだかへんて子


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