夜明けの街で / 東野圭吾

夜明けの街で


夜明けの街で / 東野圭吾


不倫小説。

なんすかね、これは。

不倫なんてする奴の気が知れない、

自分が不倫をするなんて想像もできないと思っていた男が、

不倫関係にはまって家族を捨てて、

不倫相手との新しい生活を具体的に考え出す過程を綴った不倫小説かと思うほどに、

3分の2ぐらいが男の心情の吐露で占められている。

なんだろう、これはと。

不可解に感じながらも、最高に読みやすい東野圭吾なので、

どんどん読み進めてしまう。

東野圭吾といえばミステリー作家。

ミステリーじゃない小説も書いてるんだろうけど、

ほとんど印象にないし、

不倫小説をやるってのが、新機軸ということなのかなあと、

読み進むと最後にはミステリーらしい展開がでてきて、

ああ、なんだと。

ちょっと変わった雰囲気のミステリーってことかと。

帯には東野圭吾の新境地にして最高傑作と、

鼻息荒い文言が並んでいますが、

そんなたいそうなもんでもないです。

変な期待をさせるダメな帯文ですね。

不倫する奴の気が知れないと思っていた男が、

ずぶずぶと不倫関係にはまっていく気持ちの動きが、

リアルかどうかはわからんけども、よく書けているので、

こいつはなんてバカな男なんだ、やれやれだぜと苦笑いしながら、

楽しく読めました。

不倫してる人はイベント時のカモフラージュが大変ですね。

クリスマスイブにクリスマスにバレンタインデーと。

今宵も何万という不倫カップルが

家族を欺く大作戦を決行してるんだと思うとイヴの夜は熱いぜ。

そのへんは面白かったけど、ミステリの部分は、あっそみたいな。

まあ、いまいちですかね。

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奇術師 / クリストファー・プリースト

奇術師


奇術師 / クリストファー・プリースト



これはいったいなんでしょう?

ミステリか、幻想小説か、ファンタジーか、SFか。

なんといったらいいのかよくわからない作品ですね。

前半は退屈で後半の第四部ルパート・エンジャぐらいから面白くなってきて、

最後は、なんだこの終り方?という変なエンディングを迎えて、

いったいこの本はなんだったのかと妙な読後感を残しました。

奇術師によってイリュージョンにかけられたような、

タヌキに化かされたような、奇妙な感覚になった。

第一部から第三部はミステリ小説でいうところの伏線の提示なので、

とくにおもしろいこともなく、ダラダラ長ったらしく謎が示されるだけです。

二人のマジシャンがお互いの足をひっぱりあって、

仲たがいがエスカレートしていく様子。

第四部から物語の核心に迫っていく。

ミステリ風にいうと種明かし、解決編ってとこ。

ニコラ・テスラに会いに行って瞬間移動の装置を作ってもらうんすけど、

前半を読んで、この小説はミステリーだと思ってる人はびっくりするだろね。

瞬間移動のタネが、マッドサイエンティストが発明した物質転送装置で、

実際に瞬間移動しているというものだと明らかになるんすよ。

なんじゃそりゃ~。

まあ、実際には転送装置ではなく、コピー製造装置みたいですけど、

それにしても唐突だなあ。

この小説は「プレステージ」として映画化されているけど、

どんな風に映画化したんすかね。

まだ見てないんすけど、あらすじを読んだ限りでは、

単純な敵対するマジシャンの対決ミステリーサスペンスみたいな印象を受けたけど、

この小説のヘンテコな雰囲気をそのまま映像化してるんすかねえ。

解説には、ジュード・ロウとガイ・ピアースで映画化予定ってあったけど、

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訪問者 / 萩尾望都

訪問者



訪問者 / 萩尾望都

「訪問者」「城」「エッグ・スタンド」「天使の擬態」の4つの短篇を収録。

「訪問者」は「トーマの心臓」にでてくるオスカーが学校に来る前のことを描いた物語です。

オスカーの出生の秘密が描かれるということで、読んでみました。

両親の破局。

母親を殺した父親との放浪生活。

このパパンはけっこう怖いです。

顔が。

悩んでる。

苦しんでる。

オスカーの存在そのものに。

愛したいのに愛せない。

オスカーのほうは、パパを好きで一緒にいたいと思う。

「トーマの心臓」でのオスカーは、

大人びた青年でしたが、「訪問者」では無邪気な少年。

こちらも父母の愛を求めているのだが、

愛情で返してもらえない。

愛したいのに愛が上手く交差しないもどかしさを感じさせる作品です。

「城」は、人間は良い面と悪い面というふうに、

きれいにわけられるもんじゃないということに気がつく少年期の話。

「エッグ・スタンド」はドイツ軍占領下のパリを舞台に、

人殺しの少年を主人公に人を殺すとはどういうことかの物語。

これはけっこうサスペンスでおもしろいです。

ラウルがなんだかとっても美しく見える。

「天使の擬態」は女子大生と先生のお話。

薬を飲んで自殺をしようとした女の子を助けたことから始まるラブストーリー。

なぜ自殺をしようとしたのかっていうのが最後にわかって、

なるほどねと。

まあ、あんまりぐっとくる話はなかったっすかね。

トーマの心臓の興奮をもう一度ってかんじで、

「訪問者」を読んだんすけど、

訪問者よりも「エッグ・スタンド」が思いのほかよくて、

拾い物でした。

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男性不信 / 池松江美

男性不信


男性不信 / 池松江美

池松江美とは誰?ってかんじですけど、

辛酸なめ子先生の本名だそうです。

この本は自伝的小説だということで、

辛酸なめ子の分身であろう虫酸ラン子という登場人物が、

生い立ちやこれまで男たちからどんな仕打ちを受けてきたか、

どう思ったかということを語りあげる形式で話は進みます。

内容は、これまでの辛酸なめ子の書籍で書かれていたことが多いので、

あまりインパクトはなかったですね。

むしろ毒が足りないと感じてしまったぐらいです。

おお、のってきた、毒爆弾が爆発するかと期待をしたところで、

膨らんだ毒袋は破裂せずしゅるしゅるとしぼんでいく。

まあ、辛酸なめ子のエッセイやルポやコラムを読みなれている人にとっては、

物足りなく感じてしまうんじゃないでしょうか。

辛酸なめ子処女であれば、なかなか楽しめるのではないかと思います。

辛酸なめ子さんの毒は強烈ですからね。

エッセイを読むとしれっと猛毒を吐いていることが多くて、

軽い気持ちで読んでいると不意打ちをくらって、

こんなことを軽々と書いて出版するとはすごいと

いつも感心してしまいます。

男という生き物はほんとうに愚かです。

わたしの近くには、

パスタを茹でただけで、おれは料理が上手いと勘違いしている男、

カレーのルーを2、3種類混ぜて凄腕シェフ気取りの男、

ぐらいの小物しかいませんが、辛酸なめ子先生はあのように地味に見えて、

なかなか行動力のある人のようで、

マメにいろんな活動をしていろんな場所に顔をだしているだけあって、

様々な愚かな男に遭遇してきているようです。

見栄を張って嘘をつく。

女を若さと小奇麗さでしか判定しない。

ほんとうに男という生き物は愚かですね。

しかし、グロテスクな女性のアソコを直視できるだけでも

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強く生きるために / 美輪明宏

強く生きるために


強く生きるために / 美輪明宏



携帯電話の待ち受け画面に美輪明宏の画像を使い始めて、

なんだか小さなハッピーが続いている今日この頃です。

テレビでときどき拝見する美輪様のお姿は、

もはやおじさんでもおばさんでもなく、

性別、種を越えて、

美輪明宏という高エネルギー体としかいいようがないですね。

あのパワーはどこからやってくるのでしょうか。

相当にタフな精神、肉体の持ち主であることがオーラから見受けられます。

待ち受け画像にするだけでも、魔を払い福を呼ぶ力がありそうです。

魔除けという観点からでは、

今現在の金髪で度派手なお召し物を着ていらっしゃる美輪様の画像がよさそうですが、

美的な観点からすると、

ブラックスーツをタイトに着こなした凛々しいハンサムメンである

若かりし美輪様のモノクロ画像も捨てがたい。

どちらを選ぶか悩むところですね。

まあ、冗談はさておいて、

この本は、お悩み相談形式のものです。

読者からの悩み相談を美輪様がずばっと斬る。

恋、金、仕事、人生など様々なタイプのお悩み相談があります。

その回答に一貫して流れるのは、他人に求めないという姿勢。

親が恋人が子供が夫が妻が、あれしてくれないこれしてくれないと、

だだをこねても仕方がない。

他人に求める生き方をしていては、

自分らしく強く生きることなど叶わない。

まず自分がどうあるべきかを考えるべきだという考えには、

そのとおりだと思いますね。

親や子供、妻、夫の関係になると身内だからといって

だらしない態度をお互いとるようになるが、

つきつめれば他人なのだから、

礼儀や気遣いがあって当然だというのもそのとおりだと思います。

個というものを強く意識して生きていれば、

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その日のまえに / 重松清

その日のまえに


その日のまえに / 重松清



“その日”とは、死ぬ時ということ。

人の死ぬ間際についてのドラマの話。

「ひこうき雲」「朝日のあたる家」「潮騒」「ヒア・カムズ・ザ・サン」「その日の前に」「その日」「その日のあとで」の7章。

ひとつひとつの章が、独立した短編のようにも読めるようになってて、

こっちの話の主人公があっちの話でもでてきてってかんじです。

まあ、というかこれはそれぞれを独立させてしまってもよかったんじゃないかなあと思うけどね。

それぞれの話を無理やりくっつけた感がちょっとあるし。

まあ、なんていうんですかね、

こんな悲しいことは自分だけしか体験してないと思ってしまうけども、

身近にいる他人も、

自分と同じようなことを体験しているんだよっていう、

この死に対面するっていうことは、なんでもないありふれたことで、

普遍的な出来事なんだよっていう効果を出す意味では、

登場人物が少しずつつながっていることにも意味はあった。

帯にも涙!涙!!涙!!!とあるように、

最後の「その日の前に」「その日」「その日のあとで」は、けっこうじんわりときます。

でも、はっきりと単純に悲しいとか泣けるとかいうもんでもないんすよ。

これエンターテイメント小説じゃないからね。

文学してるから。

物語の展開で楽しませるタイプのものがエンターテイメント、

普段、はっきりと言葉にできないけども、

確かに存在する“この感じ”をどうにか文字で表現しようとするのが文学であるならば、

この小説は文学タイプです。

死は悲しいと単純にいうけれども、

人の死に対面したときの感情や涙の意味は、

そう簡単に悲しいという言葉では言い表せない。

複雑にからみあった、なんと名前をつけていいのかわからない感情を

なんとか文字の上で再現しようというチャレンジ。

作者がなんとか表現しようと攻めてる空気が強く感じられたので、

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紫の履歴書 / 美輪明宏

紫の履歴書


紫の履歴書 / 美輪明宏


写真を携帯電話の待ち受け画像にしたり、

家に飾っておくと幸福な出来事を呼ぶと評判の美輪様の自伝です。

33歳までのことが書かれいて、かなりのボリュームです。

長崎での幼少期。

原爆で町が地獄絵図になったのを目撃していたとは知りませんでした。

上京してからの青年期。

お金も行くところもなくて、知り合いを頼って町をさまよう描写が胸にくる。

歌手として成功。

ボロボロになりながらさまよった道順を

運転手つきの自家用車に乗って

タバコをくゆらせながら辿り直すシーンは熱いものがこみ上げてくる。

短い文章を改行して並べて詩のような文体で書かれたパートが、

ときおりはさまれるのがいいね。

文章のリズムに変化がでて読んでいて飽きない。

いろいろなエピソードのなかでも、おもしろいのはやっぱりロマンス。

恋のかけひき、嫉妬、哀しみ。

そういうエピソードがかなりよかったです。

赤木圭一郎との悲恋。

なんとも大人な恋ですね。

寺山修司の「毛皮のマリー」、

三島由紀夫の「黒蜥蜴」などの舞台のことも書かれています。

信仰に目覚めたきっかけとかも。

引越しの方角の話はどうかと思ったけどね。

この方角はすごくいいけども、

四十五日間は十二時前に帰ってくること。

でなければよくない影響がでてしまうっていう話。

これはいい方角なのかどうなのか微妙ですよね。

むしろこれは悪い方角なんじゃないかと思うけど。

まあ、これでまたひとつドラマがあるんすよ。

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おいしいハンバーガーのこわい話 / エリック・シュローサー

おいしいハンバーガーのこわい話


おいしいハンバーガーのこわい話 / エリック・シュローサー


ファストフードのちょっとこわいい話。

ファストフードが世界を食いつくす」をティーン向けに再構成したのがこの本。

「ファストフードが世界を食いつくす」は読みにくくて、

途中で挫折した人におすすめです。

かなり読みやすくなってる。

ファストフードの成り立ちから、戦略、フライドポテトの味、

清涼飲料水のこと、従業員のこと、

材料となる牛や鶏のこと、肥満のことなど、

こわおもろい話でおもしろく読めます。

まあ、そうですよね。

あの価格であの味、見た目と食べた後の満足感の低さを考えれば、

ファストフードがどんな代物かは想像できる。

マクドナルドのハンバーガー。

中学生ぐらいのときはよく食べた。

テリヤキバーガーが流行り始めたときで、

いけてるヤングの休日のデートコースは、

電車に乗って盛り場に繰り出して、

映画を見た帰りにマクドナルドでハンバーガーを食べるってかんじだったなあ。

ハンバーガーのあの独特な油の香りが癖になるってかんじで、

よく食べてたよ。

ポテトも同じあの油の香りがしてさ、あの匂いってかなりすごい発明ですね。

あの香料を調合した奴は天才ではないか。

一度食べれば舌が覚えてしまう単純な味で、

何度もリピートしたくなる中毒性のある香り。

まあ、懐かしいですね。

最近は食べてないです、マクドナルドのハンバーガー。

わたしにとって、マックを筆頭にファストフードの食べ物って、

間食なんですよ。

食事ではなくて、お菓子という位置づけ。

飯とは別に小腹が空いたときに、カロリーを補給するもの。

だから年とってきたら、小腹もそんなに空かないから、

間食も減って、自然とファストフードは食べなくなってきたのです。

ファストフードは、食事としてはカウントできないなあ。

見た目も貧相だし、

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魔ジャリ / 魔夜峰央

魔ジャリ


魔ジャリ / 魔夜峰央



「パタリロ!」でおなじみ魔夜峰央の漫画「魔ジャリ」です。

魔夜峰央先生がパタリロ以外どんなの描いているのか知らなかったので、

読んでみました。

赤ん坊迷企バサラが主人公。

普通の赤ん坊じゃないのです。

陰陽道の総帥、迷企伐折羅右衛門(めきばさらえもん)の魂が入って生まれた赤ん坊。

見た目は赤ちゃんだけど、中身はジジイというキャラクターです。

そんなバサラが、偽占い師や悪徳政治家と対決して

事件を解決する一話完結スタイル。

途中から、陰陽師のライバル勢力、

魔道士との全面対決全面戦争へと話は変わっていきます。

気分はサイキックウォーズ。

まあ、この赤ん坊が、いや中身は爺さんですけど、

強い強い。

そしてドスケベです。

相棒となる女学生、美加里のパイをモミモミ。

母親と一緒に風呂に入って鼻血ブーッ。

卑猥なことを言って相手をからかったり、

おさわりしたり、

言動がエロ親父そのまんまで楽しませてくれます。

子供って案外、無邪気を装ってエロいことやってんじゃないかなあとか思ったなあ。

迷企バサラというキャラクターを見るとそう思えてくる。

まあ、なかなか楽しめました。

巻末には特別篇も収録。

解説は室井佑月

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白昼の死角 / 高木彬光

白昼の死角



白昼の死角 / 高木彬光

狼は生きろ、豚は死ね!ということで白昼の死角です。

ライブドアのホリエモン騒動の時にちょっと話題になってましたねこの小説。

ホリエモンたちとこの小説の登場人物たちが似てると。

高木彬光の「白昼の死角」。

簡単にいうと詐欺師が主人公の悪人小説。

夏八木勲主演、村川透監督で映画化もされています。

「映画白昼の死角

渡瀬恒彦主演でテレビドラマ化もされてるみたいですね。

誰も思いつかない手口を考え出す明晰な頭脳、

法律の死角を巧みにつく豊富な法律知識、

人を思い通りに動かす心理術、

あとここ一番の度胸ね、

この全てをもっている稀代の詐欺師、鶴岡七郎の金融犯罪を描いた小説。

けっこうおもしろかったです。

前半は鶴岡七郎は脇役なのです。

前半の導入部分の主人公は隅田光一です。

光クラブ事件の山崎晃嗣をモデルにしたキャラクター。

最初の部分は、光クラブ事件そのまんまです。

東大生が金貸しを始めて一時は隆盛を極めたが、没落。

代表の山崎晃嗣が青酸カリ自殺をとげるという結末を迎えた事件。

鶴岡七郎は隅田光一の仲間のひとりという設定。

これが上手いなあと。

実際にあった光クラブ事件を下敷きにした話を頭にもってくることによって、

後半の隅田光一の犯罪にもリアリティがでてる。

手口が大掛かりでルパン並みに現実味がないんすよ。

でも、隅田光一にもモデルがいて、詐欺の手法も実際に使われたものらしいけどね。

ほんまかなあ。

ほんとのところは高木彬光の創作なんじゃないかと思うけど、

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