『天国と地獄』を見たんだ【映画】





前半は好きなんすけど、

後半があんまり好きじゃない映画ですね。

黒澤明監督のミステリーサスペンス。

やっぱり三船敏郎ですなあ。

前半の主役は三船敏郎で、

後半は仲代達矢と山崎努が主役になるんすよ。

後半は三船敏郎が引っ込んじゃう。

この構成がどうなんだろなあと。

前半のハラハラ感、ドキドキ感。

これはもう大満足。

三船敏郎が追い込まれる追い込まれる。

犯人の目的は三船敏郎をへこませることなんすよ。

それがうまくいってて

困る困る困り果てる悩む三船敏郎。

誘拐騒ぎに

さらわれたのが自分の子じゃないとわかって

安心できるのかと思いきや、

運転手の息子でそれでも身代金は払えと言われて

はらわんと突っぱねるけども

結局払うのが自分でもわかってるんすよねえ。

タイミング悪く会社でのごたごたで全財産をつぎ込んで

株式を買おうというとき。

その金で株を過半数買って会社を掌握しなければ

逆に自分が会社から追い出されて

無一文どころか借金かかえることになる。

今の地位と生活を失ってしまう。

自分の子供じゃないから身代金は払う必要はないから

払わないと言うんだけど、

あれはそう言って自分をどうにか納得させようと

頑張って言ってるのがわかって

見てて辛いんすよねえ、ほんとに。

職人からのたたき上げで出世したタフガイ。

曲がったことが大嫌いな性格。

そういう男なので、自分でも払うというのがわかってる。

払いたくないけど払うことになる。

でも払ったら全部終わりでまた一から。

苦労して苦労して築き上げたものだからこそ

それを失うということの大変さも知ってる。

その苦悩のドラマが前半、家の中で展開する。

それが最高に緊張感とスリルがあっておもしろいのです。

苦悩して顔を歪める三船敏郎がいいんすよ。

職人あがりなのに道具の扱いが雑なのが

ちょっとどうかと思ったんすけどね。

それが後半、舞台を外に移して

刑事の捜査がすすんで

あちこち移動したり犯人側の描写になるんだけど

こうなったら途端にスリルもサスペンスも薄くなってしまうのです。

人質いないから

あとは犯人探すだけみたいになってて

単なる人探しで緊張がなくなる。

これは作り手の意図的な二部構成なんだろうけど、

どうも後半はいまいちに思っちゃうんすよねえ。

前半は閉鎖空間で正体不明の犯人に攻められて

やり込められる三船敏郎と刑事たち。

後半は閉鎖空間から抜け出し、

攻守交替で犯人が追い詰められるターン。

それはわかるんだけど、

どうも後半はいまいちに思っちゃうんだよなあ。

それでも犯人を割り出すところまではまだいいんすよ。

そっから逮捕に至るまでの展開が

どうもなあって感じなんすよねえ。

あいつが犯人で間違いないけど、

今逮捕すると罪が軽いから

もう一度犯行に及ばせて

そこを現行犯逮捕してやろうっていうことなんすけど、

それもどうなんすかねえみたいな。

この作戦のせいで薬物中毒の女が死ぬことになっちゃうし、

仲代達矢どうなのよって思ったなあ。

ペラペラと軽やかに演説みたいに

やってましたけど

なんかあの刑事は人間味がなくてちょっと怖かったなあ。

ちょっと得意げに

お金を取り戻したことを

ペラペラとやる仲代達矢のあの軽薄な感じは最高で、

やっぱ仲代達矢はこういう軽くて

ちょといやらしい感じの役をやったら最高にはまるなと。

まあ、藤田進と志村喬というそれまでの黒澤明映画で

主要キャストだった二人を前に

これからは俺の時代だと世代交代を

軽やかに宣言してるようでおもしろかったですけどね。

なので後半がだいぶ落ちるんすよねえ。

前半の良さに比べると

後半はだいぶ落ちる感じです。

これがもし捕り物なんか描かずに

ずっと三船敏郎を主役にすえて

山崎努の描写は極力おさえてやって

目的も正体もよくわかんないやつによって

人生振り出しになると

苦悩しまくる三船敏郎を追い続けて描写してたら、

どうなんだろって思うんすけど、

まあ、山崎努を徹底的に叩くというのは

作り手のメッセージですかね。

貧乏をひがんで他人様に悪さするようなやつは

コテンパンにぼこぼこに

やられてしかるべきであるという。

最後、バーンッって三船敏郎と山崎努の間に

シャッターが落ちますけど、

あれは二人の間には

相容れない壁があるってことっすよねえ。

貧乏をひがみ、成功している三船敏郎を妬み、

他人が落ちるとこを見て楽しむ人生を選んだ山崎努。

同じように貧乏の出だけど、

努力と才覚で地位を築き、

また転落して一から出直しだが

他人を恨む暇もなく自分の人生をやってる三船敏郎。

二人はまるで違う。

三船敏郎はあれだけひどい目にあったのに

山崎努のことをなんとも思ってないんすよねえ。

自分の人生をやるのに忙しいから

山崎努になんかかまってられないって感じかな。

他人が不幸になるとこ見て楽しむ生き方してるやつは

処刑されて当然、死刑だ!というはっきりとしたメッセージを感じたな。

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