2009年07月02日

手塚治虫名作集 (3) 百物語 / 手塚治虫


手塚治虫名作集 (3) (集英社文庫)



手塚治虫名作集 (3) (集英社文庫) / 手塚治虫



手塚治虫のオムニバス短編集。

百物語・安達が原・荒野の七ひき・ロロの旅路の4編収録。

巻末の解説エッセイは辻仁成です。


百物語

百物語はゲーテの「ファウスト」を時代劇に翻案したもの。

お家騒動のとばっちりで切腹しなけりゃいけなくなった会計係の男が、

悪魔に魂を売るかわりにもう一度人生をやり直す物語。

メフィストにあたる悪魔が、スダマっていう女の悪魔なんす。

不破臼人(ふわうすと=ファウスト)として別人になった男は、

もう一度人生をやり直したい、

天下一の美女を手に入れたい、

一国一城の主になりたいという三つの欲望を満たすために

冒険することになるってわけ。

妖怪変化が入り乱れる怪奇時代劇ってかんじです。

不破が見初めた美女ってのが、妖怪九尾のキツネで一騒動あったり、

ぱっとしない国に仕えて、その国を繁栄させて、

乗っ取ったりと大冒険です。

けっこうあっさりと最後は終ります。

なんと悪魔に惚れて潔く切腹です。

悪魔のほうも不破に惚れてんの。

悪魔と人間の相思相愛で、まあ、わが人生に悔いなしみたいな。

ゲーテのファウストってどんな結末なんでしたっけ?

主人公と悪魔が相思相愛になるなんて展開ではないっすよねえ。

手塚治虫は、ファウストが気に入ってるみたいで、

初期にそのものずばりの「ファウスト」を描いてる。

初期のものなので、絵柄は昔のマンガってかんじでかわいらしい。

晩年に「ネオ・ファウスト」っていうのも描いてますね。

こっちは未完ですけど、かなりおもしろい。

学生運動が盛んな時代の現代日本が舞台になってる。

ファウスト、百物語、ネオファウストで手塚治虫ファウスト三部作です。

安達が原

これ好きですね。

黒塚の鬼婆伝説をSFで料理。

SFらしいSFな話。

SFってやっぱり“時間”をあつかったものが王道だと思うんすよ。

時間の進み方の違いによって引き起こされる悲劇的ドラマ。

悲劇じゃなくてもいいんすけど。

時間のねじれによって起こるドラマ。

この「安達が原」は切ないっすねえ。

政府への反乱分子を処理する殺し屋ユーケイが

ある辺境の星に到着する場面から始まる。

今回のターゲットは、魔女みたいな老女。

何度も殺し屋を返り討ちにしている老女。

老女を処理しようとしたところ、老女はユーケイの身の上話を聞きたがる。

ユーケイがこの仕事に就くようになった経緯を語って聞かせるのだが、

これが哀しい物語があるってことが最後に明らかになるんすよ。

切ないなあ。

アンニー!!!

おすすめですね。



荒野の七ひき

PEGPPという宇宙人を皆殺しにする組織の人間が、

手違いから砂漠を歩いて宇宙人を本部まで連行しなけりゃいけなくなるお話。

いろんなタイプの宇宙人がでてきます。

知的で超能力を持つタイプ。

体を食糧にして分け与えるタイプ。

水分を他人に与えられる植物タイプ。

予知できる宇宙人。

様々な姿かたち、能力をもつ宇宙人たち。

砂漠を横断する間に、宇宙人にいろいろ助けられるわけ。

人間の敵として宇宙人を敵視していたが、

実は宇宙人側に敵意はなかったっていう話。

なんか人種の違いや考え方の違いも、

お互いよく知り合えば、敵対することもないというメッセージを感じるお話ですね。

PEGPPの隊員らは日本人っていう設定なんすよ。

ということは宇宙人たちってのは外国人のメタファーなんでしょなあ。



ロロの旅路

動物ものか。

母親を剥製にされてしまった子狼の冒険と、

通称“風通し”のベンというコソ泥の若者の話。

まあ、親を慕う子の思いみたいなしんみりした物語ですね。


解説エッセイ「大人になったレオへ」

芥川賞作家でありミュージシャンであり中山美穂の夫でもある

マルチなアーティスト辻仁成さんのエッセイです。

この巻に収録されている短編についての話ではなく、

手塚治虫作品全般にたいする雑感みたいなエッセイです。

漫画家を目指していたこともある辻さんの印象深い手塚作品は

ジャングル大帝」だそうです。


まあ、SF3作品に人情話1編という構成にはまとまりがないっすけど、

どれもおもしろいです。

おすすめは「安達が原」かな。

この中では群を抜いておもしろい。

こんな形で再会するなんて哀しすぎる。

お互いこんな姿になってしまうとは

思いもしなかったあの時に戻れたならどんなにいいか。

いっそのこと永遠に離れ離れでいたほうが幸せだったのに、

なんという運命の皮肉。

・アニメライオンブックスシリーズ 安達が原












ヤフオクで検索





【手塚治虫の最新記事】

posted by ビショップ at 06:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/122628515

この記事へのトラックバック

動画を保存するなら→RealPlayer