
狂気にあらず!?―「パリ人肉事件」佐川一政の精神鑑定
眩暈が……。
何気なくページをめくったときに目に飛び込んできた写真のインパクトがすごい。
う、これ、なんだと一瞬固まりました。
巻頭に写真が7ページほどついてるんすけど、
死体の写真です。
その写真がまたページいっぱいの大きさで、きついんすよ。
トランクからかすかにのぞく足。
殺害現場のアパート。
ビニール袋につめられて冷蔵庫に保管されていた肉塊。
皿に盛られた人肉。
バラバラに切断された犠牲者の死体。
これがでっかい写真で載ってて、初めて見たときは、
ほんとに眩暈がしてきたなあ。
今でもあまり見ないようにしてるけど、
見ちゃったら気合をしっかりいれてないと頭の奥がじんじんしてきて、
ふらふらっとなりますね。
作り物の死体は映画やらなんやらで精巧な作りものをさんざん目にしてて、
そんなに気持ちが悪いとも思わないけども、
やっぱ本物だと思って見ると衝撃がすごいありますわ。
犠牲者のルネ・ハルテヴェルトの生前の写真と、
当時の佐川一政の写真も証明写真風のものが載ってます。
これを見る限り、ルネは、ぽっちゃりしたウィノナ・ライダーみたいで、
なかなか美しい人っぽい。
佐川一政のほうは、髪型が落ち武者状態なので、
なんか不気味にも見えるけど、顔がえらく細いなあというだけで、
なんかおとなしそうな雰囲気で先入観なしに見れば普通の青年風。
この事件のことはあんまり知らなかったです。
佐川一政という人が、留学先のパリで級友のオランダ人女性を殺害して、
その肉を食べたという1981年の事件。
あんまり記憶にないっすけど、当時はマスコミがいまより凶暴だったから、
報道もいっぱいされたと思うけどね。
しかも佐川一政は罪に問われていないんすね。
フランスで精神鑑定されて、異常だということで病院にいれられて、
日本に送り返されたってことで。
なんとも信じられないような事件ですが、
事件の後の展開もほんとに実話かよっていうぶっ飛びかた。
唐十郎
そこから小説を創作。
その小説「佐川君からの手紙
佐川一政が収監中に事件のことを書き記したものが、
勝手に「霧の中
もうなにがなんだかわけがわかりません。
この佐川事件をどう考えればいいのかよくわかりませんな。
異常者の異常な犯行と片付けても、
正常な判断力の中で行われたことだと考えても、
どっちにしろわけがわからない。
この本には、コリン・ウィルソン
フランスで行われた精神鑑定の鑑定報告書、
天野哲夫と佐川一政の対談、
芦沢俊介の解説が収録されています。
コリン・ウィルソンの分析は、読み物として非常におもしろいですね。
猟奇や神秘についての本をいっぱいだしてるだけあって、
読み物として完成度も高くて。
佐川一政が子供の時に、叔父の佐川満男と一緒にやったごっこ遊びが、
刷り込みされてカニバリズムという行為への欲望を
膨らませることになったんではないかと。
この遊びは「巨人と騎士」というゲームで、
叔父の佐川満男が巨人役で一政と弟を襲って満男の友人が、
子供を守る騎士の役なのだが、巨人は騎士を倒し、
子供を鍋でぐつぐつ煮て食うという結末になる遊び。
なんの遊びなのか、よくわからんが、
子供を怖がらせて、ワーキャー言うたわいもない遊びなんだろね。
対談もなかなか興味深かったです。
オウムの事件についても言及してたし、
唐十郎の「佐川君からの手紙」を芥川賞に強力に推した大江健三郎への批判とかもあって、
読み応えはあるんだけど、
結局、なんでカニバリズムなのかということはさっぱりわかんないっすね。
人の肉を食いたい願望は子供のころからあったらしいです。
そのうち西洋の大柄な女性の肉が食いたい欲望になって、
留学したことによって、そのまたとないチャンスにめぐり合う。
何度も未遂を繰り返すうちに、
このときを逃すわけにはいかないという強迫観念にとらわれていく。
そしてルネという女性を撃ち殺して肉を食うことに至ると。
まあ、いくら情報を整理して、もっともらしい説明をされたとしても、
納得はできないっすね。
わけわからんのです。
しっかし、写真はきつかったなあ。
猟奇関係が好きでいろいろ見てる人にはなんてことないんだろうけど、
きつかったなあ。
映画の「ソドムの市
別に見なくても、読まなくてもよかったなあという感想ですね。
やらずに後悔するなら、やって後悔しろとよく人は言いますが、
それも時と場合によりますね。
人を食ってみたいからって、わざわざ人殺しはしなくていいですよ。
やらずに後悔するほうがいいときもあるような気がする。
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