2008年11月13日

目羅博士の不思議な犯罪 江戸川乱歩全集(第8巻) / 江戸川乱歩

目羅博士の不思議な犯罪


目羅博士の不思議な犯罪 江戸川乱歩全集(第8巻) / 江戸川乱歩



表題作「目羅博士の不思議な犯罪」を含む8作品を収録。

目羅博士は抜群におもしろいのですが、

いかんせん他の作品は今一歩、

わたくしの琴線を振るわせるところにはいたりませんでした。

やはり江戸川乱歩は初期の短篇に限ります。

初期の短篇群の作品としての完成度の高さは、

ちょっと異常ではないかと思ふのです。

「目羅博士の不思議な犯罪」も傑作といって差し支えないでしょう。

探偵小説のネタ探しに町をぶらついていた小説家が、

上野動物園で出会ったルンペンのような青年から聞いた不思議なお話。

「模倣」という人間心理の恐ろしさと、

月光に宿る狂気の作用のオカルティックな恐ろしさが、

絶妙にミックスされた短篇で、

乱歩の独特な語り口も相まってずんずんと作品世界に引き込まれていきます。

乱歩の自作解説によると、連続自殺という部分の着想は、

エーヴェルスの「蜘蛛」という短篇から借りたとのこと。

海外の作品から着想を得て、

それを日本の風土にあうように置き換えて再構成し、

幻想的な語り口で仕上げるというのが乱歩の真骨頂。

長編の見世物サーカス小屋のような怪奇趣味も悪くはないのだけれど、

短篇の切れ味鋭い味を覚えてしまうと、

長編作品の助長さには耐えられなくなるのです。

「目羅博士の不思議な犯罪」のほかに、

「地獄風景」「恐怖王」「鬼」「火縄銃」「殺人迷路」「悪霊」「妖虫」を収録。

「火縄銃」はプロデビュー前に書かれた処女作。

「地獄風景」は小型版「パノラマ島綺譚」。

複数の作家で物語を書き繋げるリレー連作として書かれた「殺人迷路」。

ドイルの「ブルース・パーティントン設計書」のトリックを借りた「鬼」。

連載を3ヶ月休んだ上に、未完で終了した「悪霊」。

少年探偵団シリーズに通ずる荒唐無稽さをもった「恐怖王」「妖虫」。

なかなかバラエティに富んだラインナップでございますし、

乱歩の作品の変遷を知るという意味では興味深い作品ばかりですが、

完成度が低いものも多く、

やはり「目羅博士の不思議な犯罪」の完成度の高さが際立っています。

今宵は満月。

妖しく輝く月の魔力に気をつけあそばせ。

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